吹奏楽のトランペットは、1st,2nd,3rdの3パートに分かれる曲が多いです。
特に中高の吹奏楽部などでは、「1stは上手い人、3rdは下手な人が担当する」という風潮がありますが、この認識は誤りです。なぜこのような認識が持たれているのでしょうか?
本記事では、トランペット3rdを担当して悩んでいる人や、これからトランペットを始める初心者向けに、3rdの役割を改めて解説します。
3rdの役割
まずはトランペット3rdがどのような役割か説明します。
ハーモニーの支え
トランペット3rdは、通常、メロディーの上にある和声の一部を担当します。つまり、トランペットセクションの中で、メロディーのサポートをする役割です。
例えば、トランペット1stが主旋律を担当し、2ndがハーモニーの一部を担当する中で、3rdは和声の一番下の音を担当します。これにより、トランペットパート全体のハーモニーが豊かになり、より深みのあるサウンドが生まれます
リズムのサポート
吹奏楽では3rdがリズムパートを担うことも多いです。3rdだけというよりはトランペットパート全体でリズムを刻むこともよくあり、3rdパートが正確なタイミングとリズム感を持っていることで、1st2ndも吹きやすくなります。
トランペットパートでユニゾン
1stから3rdまで同じ音、同じメロディーで演奏することもよくあります。
この場合は、1st支える意味でも、2nd3rdがよりしっかり吹く必要があります。
他のパートとのユニゾン
トランペットの3rdだけが、他のパートと同じ動きをする場合がたまにあります。中でもホルンと同じ動きをする場合があります。この場合は、トランペット1st,2ndではなく、ホルンなど同じ動きをするパートを意識しないといけません。
3rdの難しいポイント
次に3rdを担当する上で難しいポイントを説明します。
低音が多い
トランペットは高音の難しさに気を取られがちですが、低音も同様に難しいです。
「低音は簡単でしょ?」ともし考えている人がいれば、その人は低音をちゃんと吹けていない可能性があります。
確かに、高音は気合いだけでは鳴らないことが多く、低音は無理矢理鳴らすだけであれば比較的容易です。しかし、低い音は聞こえにくいので、正確に楽器のツボを捉えないと、しっかり音が鳴りません。低い音のツボを捉えて正確に吹こうとすると、唇が反応せず音が全然鳴らなかったりと、低音が難しいということが分かるはずです。
つまり低音が多い3rdは、しっかり低音が鳴らせる実力者でないと務まりません。
ツボの概念を知らない人は、以下のリンク先を参考にしてみてください。
コード(和声)の理解
3rdに限らず、奏者全員が理解する必要がある内容ですが、トランペットでのハーモニーを奏でるために、特に3rdは和声の理解が必要です。
同じドでも、和音によって高めのドや低めのドが適切なのか考えて演奏する必要があります。
コードまで考えが及んでいないと、ハーモニーが崩れ、綺麗な演奏に聞こえません。
3rdは下手な人が担当するパートとなぜ誤解される?
冒頭でも述べましたが、3rdは下手な人が担当する、という誤ったイメージを持っている人がいます。
1stの立場からすると、2nd3rdが上手な方が吹きやすいですが、なぜこのように誤解されるのでしょうか?
メロディーがなく目立たない
3rdはトランペットパート全体でのメロディー演奏はあっても、3rdだけでメロディーを奏でることはほぼなく、多くがハモリです。当然ソロもほとんどないので、3rdが目立つということはほとんどありません。
目立つパートは上手い人が演奏するので、目立たないパートは下手な人が演奏すると誤解されることがあります。
低音の演奏が難しいことをしらない
前述の通り、低音は難しいのですが、そのことを知らない人がいます。
高音が難しさに対して、低音の難しさが軽視されがちです。そのため誰でも簡単にできるパートだと勘違いされます。
初心者が任されがち
3rdは初心者が担当するパートになりがちですが、これが大きな要因だと思います。
初心者は高い音が出ないので、1stの楽譜に出てくる音が出せないことが多いです。またソロもあったり1stは目立つので、必然的に3rdを担当することになります。
つまり3rdは初心者が最初に担当するパート、という傾向から、3rd奏者は下手な人というイメージが植え付けられてしまい、1stは上手い人、3rdは下手な人が担当すると考えている人が多いと考えられます。
いつか1stを吹きたい…!
いつも3rdを担当しているけど、いつか1stを吹きたいと考えている人はいると思います。
ではどうすれば1stを吹けるようになるか考えていきましょう。
3rd(任されているパート)をちゃんと演奏する
1stを吹きたいと思っていても、まずは任されている3rdを吹きましょう。
3rdや下のパートは初心者が最初に任されるパートです。3rdがしっかり吹けていないようであれば、周りから、1stはまだ難しいと思われるのは当然です。
しっかり3rdを吹けるように練習しましょう。
1stを吹けるように備えておく
そもそも1stを吹ける実力がないと、1stを務めることは難しいと思います。
特に1stは高音がたくさん出てくるので、まずは高い音を吹けるように音域を広げましょう。
その他、基礎練を怠らずにしっかり実力を付けていきましょう。
上手になっても1stを任せてもらえない場合は?
これは所属する団体の事情によると思います。
学生であれば、実力主義の部活の場合、実力次第ですぐにでも1stに乗れると思います。年功序列の場合は、先輩が卒業するまで待たないと行けない可能性があります。人間関係が複雑な場合もあると思うので、波風を立てない程度に、いつか1stをやりたいという話を周りにしてみると良いかもしれません。
社会人団体の場合は、精神的に大人な人も多い印象なので、ある程度パートの希望が叶うと思います。コンクールに出るような実力主義の団体だと難しいかもしれませんが、そうでない団体は、体力の兼ね合いなどで1st,2nd,3rdを曲によってローテーションすることが多いです。色々見学に行って自分に合う楽団を探してみましょう。
忘れてはいけないことは、吹奏楽などの演奏は個人でなく集団で行うものです。自分の待遇に不満があったとしても、決定した人に悪意はなく、他の人の意見との兼ね合いの結果かもしれません。もしくは自己評価が高かっただけで、単なる実力不足で1stを任されていない可能性もあります。自分の意見を主張することは勿論大事ですが、メンバーとの協調性を大事にして、周りと話し合ってみましょう。
まとめ
トランペット3rdの役割、扱いについてまとめました。
3rdは決して下手な人が担当するパートではありません。むしろ難しいパートといえます。逆に言い換えると、本来1stが吹けるような人でないと、3rdは務まらないといえます。
また、1stを吹きたいという気持ちはトランペット吹きにとってとても大切なことですが、3rdも吹いていて面白いパートです。
3rdをちゃんと吹けるようになりたい、もしくは1stをふけるようになりたい、と考えている人は、一度プロのレッスンを受けてみてはいかがでしょうか。